データ分析コーナーの使い方⑪
<目黒記念233倍1点目的中のロジックから、長距離重賞のポイントを読み解く(鮮度時のC要素について②)>
GⅠシーズンが終わって取りかかっていた仕事も一息ついたので、前回書いた話の続きをしていこうと思う。
ちょうどこの間、解説途中だったソールインパクトが出走した目黒記念が行われた。このレースでは、予想上位3頭が3着以内を独占して、3連複の233倍を1点目で当てたので、記憶の新しいうちにこちらを使いながら続きを見ていくことにする。
というのも、この目黒記念にはディープインパクト産駒が4頭も出走していて、ディープインパクト産駒の鮮度問題を考えるのにちょうど良いサンプルレースになると同時に、他にも鮮度とタイプ(血統)、枠順を考えるのにおあつらえ向きの馬が何頭も出走していたレースだったのだ(携帯サイトの回顧の方でも解説したが、こちらでは血統に軸足を置いて見ていくことにする)。
このレース、ディープインパクト産駒の中で最も人気になっていたのは、3番人気ゼーヴィントだった。既に重賞勝ち馬で、GⅡのAJCCでは1番人気に支持されて2着と連対。格上の実績を持ち、休み明けの前走も今回と同じ2500mで小差の6着と好走したため、叩き2戦目と実績を支持されて人気になっていたのだ。また前走は初めての2500m以上の距離であり、慣れが見込めるという点も、人気を加速していた。
しかし、評価されたその全てが、ウマゲノム分析においては、ディープインパクト産駒のマイナス要素となってしまうのである。
まず「実績豊富なディープインパクト牡馬」というのが、2500mではマイナスだ。2500mはS質の強い条件で生命エネルギーを強く要求される。その距離を古馬相手に鮮度が薄いと、ディープインパクト牡馬にはやや体力のストック的に厳しく感じるのだ。また前走、休み明けで6着と好走したのも良くない。ディープインパクト産駒は基本的に鮮度が高ければ高いほどパフォーマンスが上がるので、「休み明けで初距離」の前走ほど良い条件は、なかなか思いつかない。その鮮度を頼って好走した直後だ。反動が出る可能性が極めて高い。ウマゲノム辞典でも書いたように、トップクラスのレースをディープインパクト産駒が勝ち負けするには、叩き3戦以内、ないし昇級2,3戦以内が理想で、鮮度が落ちるほど、自身にとって体力的にタフな状況では走れなくなるのである。
ただ、同馬は叩き2戦目だった。「叩き3戦以内」と書いたように、ディープインパクト産駒の中には、休み明けより叩き2戦目や3戦目くらいにピークとなる産駒もいる(下級条件から駆け上がってくるタイミングでなければ、叩き4戦目以降がピークになることはほとんどないが)。そこでこのセーヴィントを見ると、休み明けで重賞を勝っているので、少なくとも「休み明けを走らないタイプ」でないことは確かだ。そういうディープインパクト牡馬が、2500mでしかも斤量増という体力的にタフな状況で、前走より前進する可能性は低いと考えて良い。したがって、無印が妥当な評価になる。
では、前回話の途中だったソールインパクトはどうか?
前走は13着惨敗だ。しかも着差は1.8秒も離されている。これなら、ストレスをリセット出来る。2500mもタフな条件ではあるが、前走がGⅠの3200mでそこからの短縮を考えれば、苦手な体力面も補強できる。
ストレスのリセットと体力補強という条件が揃って8番人気の人気薄なら、上位評価にしても悪くはない。ただ、私は押さえの1頭までとした。
同じく人気薄で本命にしたダイヤモンドSとは何が違うのか?
ハンデも同じ54キロである。しかもダイヤモンドSは、延長の3400mという体力的にタフな条件だったのに評価した馬だ。今回は唯一の重賞連対を果たした2500mなのに、敢えて評価を下げる理由は何か?
ダイヤモンドSは、休み明け2戦目で、4走前が条件戦だったので長距離重賞もまだ3戦目、つまりは休み明け3戦以内で、なおかつ昇級戦3戦以内のようなものだった。またダイヤモンSは生まれて初めての2600m以上の距離でもあった。
鮮度が今回と比べると段違いなのだ。
鮮度の落ちた長距離戦の今回は、古馬のディープインパクト牡馬には辛いと判断出来る。ただ、ここ2走を7着、13着と大惨敗していいれば、休養してなくてもほぼ休養と同じリセット効果、リフレッシュ効果が期待出来て、また距離も700mと大きく変化するので、ある程度フレッシュな状態でもあるのは確かだ。同馬はその戦歴を見れば分かるが、叩かれながら徐々に上昇する、ディープインパクト牡馬としては珍しいC的要素も持っているので(そこで休み明けでなく叩き2戦目のダイヤモンドSで狙ったこともある)、ある程度リフレッシュした今回は、せこくロス無く乗れば、生命エネルギー不足を補えて上位に来ると判断出来る。結果は、そこまでせこくは乗ることが出来ず、また他の走るべきタイミングの馬が、その馬にあった騎乗をした為(これについては後で詳細する)に、その馬達の後の5着という着順に落ち着いたのだった。
このレースのディープインパクト産駒で一番判断が難しいのが、6番人気のポポカテペトルだ。同馬は、前走準OP勝ちで鮮度が高い。鮮度時には強いディープインパクト産駒らしく、昨秋には、1000万勝ち直後で初の2500m以上だった菊花賞を13番人気で3着に激走した馬である。ただ鮮度を頼ってあまりに激走し過ぎたため、反動で次走の準OPを14着に惨敗。3走前からようやく菊花賞の心身疲労が取れて調子が上がってきた馬だ。
同馬の戦歴を見ると、1000万勝ちが12頭立ての12番枠で、菊花賞は14番枠+800mの延長+不良馬場、前走の準OP勝ちが12頭立ての8番枠だった。「少頭数」や「外枠」、「延長」、「道悪」と、そのどれもが前走より揉まれない条件での好走なので、ディープインパクト産駒の中でも、特に量や体力の豊富なL系と考えられる。
ディープインパクトは基本はL主導だが、産駒のタイプに比較的幅がある。先程のソールドインパクトはC要素が強く、短距離で走っているサングレーザーもC要素が比較的強い。このレースで3番人気だったゼーヴィントはS要素が強い。どの馬もディープインパクト牡馬なので本質的な部分では量(L)系だが、その中で幅があるということになる。
そしてこのポポカテペトルはL系ディープインパクト産駒の中でも、そのど真ん中の真性L系なのだ。
そう考えると、今回の「大外枠で東京」というのは、揉まれにくく、かつ量と体力を活かせるのでベスト条件と考えられる。
その状況でどう判断するかのかを、次回は見ていきたい。
また、目黒記念の次週、安田記念ではアエロリットから予想を当てたのだが、対抗はディープインパクト産駒の人気薄サトノアレスだった。このとき同じディープインパクト産駒で人気になっていたサングレーザーは無印にした。人気薄のマイルCSでは本命にして3着に激走した馬なのにだ。
また安田記念の翌週、つまりこの原稿を書いている最中の今日、マーメイドSが行われたのだが、10番人気の人気薄だったディープインパクト産駒アンドリエッテを対抗に予想していた。
結果、サングレーザーはせっかくの内枠なのに大外を回したため4着だったが、アンドリエッテは内枠からそのまま内を回したので1着に激走した。
次回はこの人気薄2頭を上位評価にした過程も振り返りながら、ディープインパクト産駒を中心に、ストレス状態と枠順の関係について、さらに深く考察していこうと思う。
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